【人事図書館の館長に聞く!】人事の仕事の全体像と営業からのキャリアチェンジ
10/25(金)に人事図書館の館長である吉田さん(よっさん)をお招きして、「営業から人事へのキャリアチェンジ」をテーマにしたイベントを行いました。
終了後のアンケートでは
のように、人事という仕事の解像度が上がり、人事へのチャレンジをしてみたいという方も多くいらっしゃいました。
本noteでは、イベントで話された「人事と一言で言ってもどんな仕事があるのか」「キャリアチェンジの失敗例」など人事へのキャリアチェンジにまつわる内容をご紹介いたします。
はじめに:人事の見取り図
ーー人事の仕事のイメージとは?
吉田:営業の方からすると、採用や評価などがイメージとしてはありそうですよね。
佐藤:大きく分けると「採用」「育成・組織開発」「評価・配置」「人事企画」「労務」の5つになるかなと思います。
これらは全く違うので、混ぜてはいけないものです。
採用は営業、育成・組織開発はマネジメントやアカデミック、評価・配置は調整と渉外、人事企画はコンサル、労務は経理・法務のような要素が必要になってきます。
吉田:人事の中でも領域を広げたい、と思っても難しいこともあります。小さめの会社だと人事内での仕事のローテーションを回す余裕がないので、採用が得意な人には採用を、労務が得意な人には労務をやり続けてほしい、となる可能性もあります。
佐藤:あとはHRBPと呼ばれる人は、部門の採用、育成、評価・配置を担当し、人事企画や労務は全社の人事が担当する、というような棲み分けが多いです。
部門の人事になるので、その事業部で営業をやっていた人も高い現場理解があるという意味では担当になりやすい仕事ではあります。
ーー人事の仕事の中でもイメージしにくい組織開発や人事企画とは?
吉田:組織開発は目的と手法を合わせて、どういう組織にしたいのか、そのために何が課題なのかを考えることが重要です。例えば組織開発のひとつの施策として1on1がありますが、「本音で話せたほうが良いから、とりあえず1on1をやろう」と始めると、あれ何のための1on1なんだっけ?この時間に営業活動をして売上が伸びてみんなの給料が増える方がHappyでは?となってしまうこともあります。
また人事企画は、組織として何を大切にして、全社の戦略に対して人事的観点からどう支援をしていくのかという全体のデザインをしていく仕事です。その上で必要に応じて制度をつくることもあります。
人事制度をつくっても、組織が変われば1年も経っていないのに全然適切でないものになってしまうこともあります。一般的には3−5年くらいで見直すことが多いです。
ーー新卒採用と中途採用の違いは?
吉田:新卒採用の方が、人の魅力で採用をするという要素が強いかなと思います。一方で中途は、人事の方に憧れて入社しました!という人は新卒に比べて少ないので、もっと仕組みとしてどう採用を進めるのかを考えていく必要があります。
あとは時間軸。新卒は季節性があり2-3年後のために動くことも多いですが、中途は都度人を採用したいとなって動いていきます。
営業から人事にキャリアチェンジするには?
ーーお二人の人事へのキャリアチェンジの流れは?
吉田:もともと人事領域への営業としてスタートして、CHROとして人事キャリアをスタートしました。どうしたら事業が伸びるのか、そのために人をどう動かすのかを現場の責任者として考えてきていて、そこを評価してもらってのことでした。
人事のプロフェッショナルであると言うよりは、事業に強くて人に興味がある人に人事を任せてみると何か良い反応が起きるのでは?という意味で任せてもらえたのかなと思います。
佐藤:私は人材系でエージェントをやっていたところから、未経験で人事になりました。営業時代は採用のご支援をメインにしていましたが、人事としては人事企画や異動をメインにスタートしました。
ーー営業から人事にキャリアチェンジする人の特徴は?
吉田:周りで営業から人事になっている方は2パターンあります。1つは社内に問題意識を持ち、手を挙げて自ら人事をやりたいと言う場合。もう1つは会社としてこの人に人事を任せたいと思われて打診される場合。
どちらも上手くいっているような気がします。
佐藤:いずれにせよ人事を任せたいと思われる人は、情報の取り扱いが適切ですよね。人事を担当していると、外に出てはいけない重要な情報を取り扱うことが多いので。
また営業から人事へのキャリアチェンジのスタートで言うと、中途採用が一番チャンスがあるかなと思います。新卒採用は新卒で入社した方に任せたい、人事企画や異動などは社内のことをよくわかっている人に任せたい、というケースが多いです。
吉田:あとは営業で成果を出している人だと、人事にキャリアチェンジしても上手くいきやすいとは思います。営業で成果を出している人は、しっかりと人を見て相手に合わせたコミュニケーションができて、関係構築の進め方が上手い人が多く、その能力は人事でも活かしやすいと思っています。
佐藤:採用はエースを置きたい、と新卒採用でも中途採用でもよく言われるので、成果を出していることは重要ですね。
ーー営業と人事の「評価のされ方」や「求められる能力」の違いは?
吉田:営業は高い成果を出すこと、わかりやすく売上目標に対してどれくらい達成したか、が重要です。ただ人事は、例えば採用で10人が目標なのに15人を採用すると、人件費が上振れてしまっている分をどうするの?と言われてしまいます。より達成すれば良い、というわけではないです。
人事制度でも例えば「全社方針として若手を抜擢していこう」と決めて若手管理職を増やすと制度としては成功に見えますが、シニアなメンバーから不満が出てしまう可能性があります。それぞれの観点によって評価が分かれてしまいますね。
佐藤:営業で数字を追いかけることに疲れたから人事をやりたい、という人もいますが、逆に営業は成果を出した分だけ評価をされるからこそ良い部分もありますよね。
吉田:能力に関して言うと、能力というか姿勢になるかもしれないですが「成果を出そうとすること」は共通して大事だなと思います。
採用では10人を採用する、が目標だとしても、求められる成果は良い人を増やして活躍してもらって事業を伸ばすこと、なのでそこまで見据えて動く人が活躍していますね。
佐藤:人のために何かしたいです!という気持ちが強すぎると、しんどくなってしまう部分もありますよね。
吉田:人に向き合うことが大事だから、10,000人がエントリーしてくれたなら10,000人全員と会いましょう、というのはまた成果に向き合うこととは違いますからね。
キャリアチェンジに失敗・成功する人の特徴
ーーキャリアチェンジに失敗・成功する人の特徴は?
吉田:本人が失敗したなと思いやすいタイプは、環境のせいにしがちな人です。営業から人事になると、何をしても批判されると感じてしまうことがあります。それを受けてもう嫌だ、とすぐなってしまうと失敗を感じやすいかなと。
佐藤:成功する人に関しては、計画された偶発性理論に、自分のキャリアを幸せだと思う人には「好奇心」「持続性」「楽観性」「柔軟性」「冒険心」の5つのスタンスがあるという話があります。
キャリアチェンジをすると、予定外のことがたくさん起きるのでそれを楽しみながら次につながる捉え方ができる人は成功していると思いやすい気がします。
吉田:確かに思っていたのと違ったときに、それを楽しめるかはすごく大事ですね。
人事のやりがい・面白さは?
ーー人事のやりがい・面白さは?
吉田:人事の面白さは、変数が非常に多くて手放しで上手くいくことがないところです。毎日順調に課題があって、思いもよらない良いことも悪いこともたくさん起きてしまいます。それに対しての打ち手も同じことはなくて、毎回仮説を立てて施策を試してみて、自分でいろいろ推進していく、ということが一つの面白さです。
その結果として、5年前のあの施策と、3年前のあの施策がつながってやっと今年こんな成果が出たぞ、と思える瞬間でやりがいを感じる、などもあります。
佐藤:人事の仕事は正解がないので、自分の介在価値を出しやすいなと思います。その結果として組織・事業がより良くなっていくことを感じられることも多かったです。
ーー人事の役割を一言で
吉田:人事は読んで字の通り、人を生かして事を成す、ことが役割です。人事を目指す人は人を生かすことに目が行きがちですが、如何に事を成せるかが信頼に関わってきます。
佐藤:私は人事の役割は経営と現場をつなぐことだと言っています。社員のために、が強すぎると苦しい場面もあるし、経営の言うことをただやるだけでも十分ではありません。
吉田:人事の仕事は1回やってみると、多くの人がやり続けたいという素敵な仕事なので、ぜひ挑戦してみてほしいです。
おわりに
人事、と言ってもさまざまな役割があります。人事へのキャリアチェンジをしたい場合は、社内で異動を狙うか、営業で成果を出して中途採用ポジションで転職を狙う、が比較的スタートしやすいのでは、というお話がありました。
人事キャリアを目指す方の参考になっていれば幸いです。
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